“在籍年数定年制”という爆弾提案をしてみる

 


「45歳定年制」の真意と限界

「45歳定年制」や「定年前退職」の議論が注目を集めるなか、本来はキャリア自律を促す意図だったにもかかわらず、多くの人に“切り捨て”の制度として受け止められている。これは日本社会において、転職や再挑戦を支える「制度的な橋」が存在していないことが大きな要因だ。

野口聡一氏も指摘するように、日本では組織に順応することばかりが重視され、スキルやキャリアを自ら伸ばす意識が育ちにくい。これを変えるには制度面からのアプローチが不可欠である。


「在籍年数定年制」の提案

提案したいのは、「在籍年数定年制」だ。年齢ではなく「20年在籍」を一区切りとすることで、年齢差別を避けつつ、キャリアの棚卸しと再設計のきっかけを提供できる。これは単なる“追い出し”ではなく、“次のステージに進むことを前提とした働き方”を社会に根付かせる装置となる。

  • 経験年数に基づくため公平性がある

  • 終身雇用を前提とせず、自律的なキャリア設計を促す

  • 職務遂行能力を評価軸にしやすい

  • 労働市場全体の流動性と活性化につながる


次の展開がなければ制度は不信を生む

制度だけが先行し、「次のキャリア」に進む仕組みが不十分なままでは、以下のような弊害を生む:

  • 転職先の確保が困難な中高年の増加

  • 非正規や賃金ダウンでの再就職が常態化

  • 長く働いた人が切られるという士気低下

  • 「出て行け」としか聞こえない制度に対する不信感

これらを防ぐには、“制度の次”を整える必要がある。


早期定年制を「希望ある仕組み」に変えるために

改革が機能するには、以下の要素が必須である:

  1. 転職市場の整備

  • 年齢にとらわれず職務基準で評価される仕組み

  • スキルや職務経歴の可視化

  1. キャリア支援インフラの整備

  • リスキリング支援制度の充実

  • 公的・民間連携による再就職の支援体制

  1. 再受け入れ文化の醸成

  • 柔軟な再雇用やプロジェクト契約の制度化

  • 「一度出ても戻れる」安心感の構築

  1. 労働文化の転換

  • 転職を前向きに捉える意識改革

  • 転職の空白期間に寛容な社会風土


制度→支援→文化——改革の順序を守る

社会が実際に変わるには、「制度→支援→文化」という段階を丁寧に踏む必要がある。支援もないまま制度だけ押し付ければ反発しか生まれないし、文化だけ先に求めても現実は動かない。


政治の責任と立法の必要性

多くの企業は自発的に変化を起こさない。だからこそ、制度の導入には政治の強いリーダーシップと立法措置が不可欠である。

具体的には:

  • 在籍年数定年制の合法化と制度整備

  • 職務記述書の義務化

  • 年齢差別の禁止と中高年の転職支援強化

  • 転職者を積極採用する企業へのインセンティブ

  • リスキリングへの助成制度の拡充


「出ること」は敗北ではない——キャリア進化の一歩に

これからの社会において、「組織を出ること」は敗北ではなく、“次のステージへのステップ”とみなされるべきだ。制度によってそれが“当たり前”として認識されれば、働く側も企業も、より自由で前向きな選択が可能になる。

  • 在籍年数が明示されることで、働く側が計画的なキャリア設計を行える

  • 再雇用や業務委託など多様な選択肢が広がる

  • 企業も世代交代を見据えた人事設計ができる


まとめ:制度の先に文化をつくる雇用改革を

45歳定年制や定年前退職の発想には一定の合理性がある。しかし、それが単に“追い出し制度”として受け取られてしまうなら失敗である。

在籍年数定年制は、制度と文化の中間にある“橋”として、段階的かつ実効的な雇用改革を可能にする。

焦らず、しかし確実に。 制度・支援・文化の順に進めることで、未来に向けた持続可能な社会の基盤が築かれていく。

詳しく読む↓
“在籍年数定年制”という提案--日本の雇用とキャリアに変革を(2025.4.30)

他にも読む↓
なぜ今、日本企業は雇用観と仕事観を変えなければならないのか―人材流出時代の生存戦略(2025.4.28)
「志望動機は?」という問いに企業の限界が表れている(2025.4.25)


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