「嘘をつく会社」も「会社に頼りすぎの社員」も不要だ
仕事とは何か──信頼契約としての労働関係
仕事とは、企業と労働者が相互に信頼を前提とした契約関係によって成り立っています。企業は「貢献してほしい」という期待を、労働者は「報酬ややりがいを得たい」という希望を持ち、両者の合意で成り立つものです。
しかし現実には、採用段階からこの信頼が崩れているケースが多く見られます。職務内容が曖昧なまま採用される、日本企業特有の「配属ガチャ」はその象徴です。
採用は「方向性」と「誠実さ」が鍵
仕事選びは、東京駅から新幹線に乗るようなもの。完全な理想通りでなくても、大まかな方向性が合っていれば、目的地にはたどり着けます。上越から東北、そして北海道へ──その過程がキャリアです。
ところが日本の採用は、「とりあえず乗せる」「入社後に考える」といった不透明な方法が常態化しており、若者の方向性を無視して信頼を損ねています。入社早々に辞めたくなるのは、当然の帰結とも言えるでしょう。
最初の一歩で信頼を損ねると継続は難しい
企業が求人で提示した内容と実際が大きく異なる、労働条件が後出しされる、説明会での言葉と現場での現実が乖離している──こうした採用の不誠実さは、もはやミスマッチではなく契約違反です。
労働者側が「辞めたい」と感じるのは自然な反応であり、責められるべきではありません。
キャリアは与えられるものではない
一方で、労働者側の課題も見逃せません。「理想と違ったから辞める」「やりたいことができないから辞める」といった反応が、自己責任の欠如と捉えられる場合もあります。
方向性が合っているなら、自ら活かし、伸ばしていく努力が求められます。企業が与えた環境を「どう使うか」は、個人の成長意欲と姿勢にかかっています。
採用活動に必要な「ニーズの明文化」
良い採用とは、「このポジションで、こういう役割を果たせる人が必要だ」という企業の明確なニーズに基づいて行われるべきです。
しかし現実は、「優秀そうな人をとりあえず囲う」「配属はあとで考える」といった姿勢が目立ちます。これは、企業側が自社の戦略や人材要件を言語化できていない証拠です。
この不明瞭さが、労働者との信頼関係を築けない最大の要因です。
信頼は最初の説明から始まる
採用は、労働者の人生を預かる重大な行為です。企業が、誠実な説明責任を果たし、方向性と役割を明示し、働く側が自分のキャリアと重ねて考えられる状態をつくることで、初めて信頼が生まれます。
採用時に職務と期待値を説明する
条件や働き方に虚偽がないこと
配属後も適切なフォローを行う
これらはすべて、信頼を守るために欠かせないステップです。
おわりに──信頼と方向性がキャリアをつくる
企業にとっても、労働者にとっても、無計画な採用と早期退職は時間とコストの無駄です。だからこそ、信頼と方向性、この2つが採用とキャリア形成の中心であるべきなのです。
完璧な条件でなければ動けないのではなく、方向性が合っていれば、その中で自分の力をどう発揮するかが問われる。
誠実な採用と、主体的な働き方。この両輪が揃ってはじめて、企業価値も個人のキャリアも育っていくのです。
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