企業はまず稼ぐことを恐れるな、そして人に使え。それが会社の社会的な役割だ
◆ 制度はあるのに“使えない”日本の現場
日本では、育児休業や時短勤務といった制度が法的に整備されています。しかし、実際には「休まれると困る」「誰がカバーするのか」という声が現場から上がり、制度を利用した社員が出世競争から外れるようなケースも少なくありません。
つまり、制度が「ある」のに「使えない」。この矛盾の原因は明らかです。
日本の企業には“余裕”がないのです。
◆ 生産性が低いから、制度が活きない
OECDの統計によれば、日本の労働生産性はG7諸国の中で最下位。アメリカやドイツに比べて約3割も低く、時間あたりの付加価値が圧倒的に少ないのが現状です。
この低生産性の中で企業は利益を出さなければならず、多くの現場は常に人員不足。欠員が出れば業務が回らなくなり、制度を利用すること自体が“現場の迷惑”とされてしまうのです。
この問題は「育児との両立の難しさ」などではなく、経営設計そのものの脆さに起因します。
◆ 欧米との構造的な違い
一方で、欧米諸国では適正な価格設定と利益確保を前提に、従業員への投資や柔軟な働き方の導入が積極的に行われています。

欧米企業では、「育休を取る人がいる」ことを想定して仕組みが構築されており、誰かが抜けてもチームで業務を補える体制が整備されています。
日本のように「誰かが抜けたら業務が止まる」こと自体が、設計ミスと捉えられるのです。
◆ 人を削って利益を出す構造の限界
日本企業は長年にわたり、「良いものをより安く」提供し、「人件費を削って利益を出す」経営スタイルを取り続けてきました。その結果:
サービス過剰
低価格競争の激化
利益確保のための人件費抑制
という悪循環が生まれ、職場はますます“余裕のない場所”となっていきました。
この構造のもとでは、制度を整備しても機能しません。むしろ、「制度を使う人=非効率要因」と見なされ、職場での立場を悪くしてしまうリスクすらあるのです。
◆ 利益は“削って得るもの”ではない
ここで、日本企業に強く問いたいのは次の視点です。
利益を出すことを恐れるな。そして、それを人に使え。
多くの企業は、利益を「削ることで得るもの」と捉えがちです。しかし本来、利益とは「社会に適正価格で価値を提供し、その成果として得るもの」です。そしてその利益は、人に還元されてこそ社会的意味を持つのです。
◆ 利益→人件費→余裕→創造 の好循環
適切な利幅を設定し、その利益を人件費や教育、業務改善に投資すれば、以下のような良い循環が生まれます。
利益が出る
人を雇い、余裕ある職場を実現
従業員が無理なく働ける
新しいアイデアや改善提案が現場から湧く
生産性が向上し、さらに利益が出る
これは、ドイツや北欧諸国で実際に機能しているモデルでもあります。
◆ 「制度が使えない」のは設計の責任
制度が整っているのに使えない現実を、「制度を使う人が悪い」という方向で語ってしまえば、それは社会的な敗北です。
制度を活かすには、「制度を使っても職場が回る設計」が必要であり、これは経営陣の責任であり、社会全体の課題です。
◆ 「人を削る会社」から「人を活かす会社」へ
これからの企業に求められるのは、「人を削って耐える会社」ではなく、
**「人を活かして、成長の原動力とする会社」**です。
柔軟な働き方、多様な人材、育児との両立──これらは“特別対応”ではなく、未来の標準です。その標準を前提に設計された企業だけが、持続的な成長を手にできるのです。
結論:今こそ、構造を変える勇気を
制度はある。人材もいる。意欲もある。
足りないのは、それらを活かすための“構造的な余裕”です。
そして、その余裕は利益を出すことを恐れない経営姿勢と、人への投資意識からしか生まれません。
制度を“使えるもの”に変えるには、社会全体が「人にやさしい設計とは何か」を問い直す必要があります。
その最初の一歩は、「会社はまず稼ぎ、そして人に使え」という、ごく当たり前の原点に立ち返ることです。
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