人事こそ楽をするな、自社のニーズを徹底的に考え尽くせ
「辞めない会社」が良い会社とは限らない
「人が辞めない会社は良い会社」──そう言われがちですが、これは一面的な見方に過ぎません。辞めないことが必ずしも満足を意味するとは限らず、転職の気力がない、他に選択肢がないなど、消極的な理由で成り立っている場合もあります。
しかし、熊本のイズミ車体製作所は違います。そこでは現代では珍しい「家族的な文化」に合う人材を採用し、高い定着率を実現しています。それは単なる温かい雰囲気の問題ではなく、自社に合う人材を見極めて採用するゾーニングが成功している証です。
本当に良い会社とは、「辞めない会社」ではなく、「自社の文化や仕事の形に適した人材を的確に迎えられる会社」なのです。
採用の本質は「数」ではなく「適合性」
採用とは、「枠に合うピースを埋める作業」です。パズルで言えば、どんなにピースが多くても、形が違えばはまりません。会社も同じです。事業内容や組織構造に合った人材を採ることが重要です。
サッカーでも、11人いればいいのではなく、前線・中盤・守備・控え、それぞれに適した選手が揃ってこそ機能します。採用も同様に、ポジションを定義し、その役割に合う人材を見極めて配置するという考え方が求められます。
採用は単なる人数合わせではなく、会社の未来を形作る設計行為です。
少数精鋭を「目指す」姿勢
会社は可能な限り、少数精鋭を目指すべきです。もちろん、その「少数」が2人である場合もあれば、1万人である場合もあります。しかし重要なのは、必要な分だけの人材を的確に配置すること。
人が多すぎると責任が曖昧になり、組織が弛緩します。少数精鋭であれば、役割が明確になり、効率的で、機動力のあるチームが実現します。
人が辞めるのは正常な会社活動
どれほど採用がうまくいっても、人が辞めることは避けられません。むしろ、人が辞めていくことは自然で健全な新陳代謝です。
人間関係の不一致
組織の事業が発展、変化していく中での方向性とのズレ
ライフステージの変化(育児・介護・引越しなど)
退職をネガティブに捉えすぎるのではなく、「なぜ辞めたか」を分析し、次に活かすことこそが、柔軟で強い組織をつくる第一歩です。
最悪なのは「辞める前提で多めに採ること」
日本企業の多くが未だにやっている最悪の手法──それが「辞める前提で多めに採っておく」という発想です。
こうして採用された社員が辞めなかった場合、「余剰人員」となり、会社側はそれを解消するために、配置転換、役職変更、転勤などを駆使して、結果的に“追い出す”ような人事を行います。
この構造は、社員に対して極めて不誠実です。そして、採用コスト・育成コストの無駄であるばかりか、組織に対する信頼を蝕み、優秀な人材から順に去っていく土壌を作ります。
採用の理想と現実を比較する
以下に、理想と現実の採用の姿を表で整理します。

採用とは「設計」であり「戦略」である
採用は単なる現場対応ではなく、戦略的な組織設計です。ゾーニング(人材の適合性を見極めて配属すること)こそ、採用の第一歩です。
「なんとなく採る」「とりあえず枠があるから採る」といった思考では、組織は腐敗します。
どんな仕事があり
その仕事にはどんなスキルと価値観が求められ
それに合致する人材をどう見つけ、定着させるか
この問いに向き合わなければ、人事の仕事は果たせません。
良い会社とは「辞めない会社」ではなく、「自社にとって本当に必要な人材を、適切な数だけ、適切な方法で迎えられる会社」です。
そして、それを実現するための最初の一歩が、「楽をしない人事」──ゾーニングを徹底して行う採用の設計思想に他なりません。
詳しく読む↓
ゾーニング採用の必要性|人事は楽せず自社のニーズを見極めろ(2025.9.1)
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